「まあ、万事解決ってやつだろうね。もちろんもう、戻らないものもあるけどさ」
ひとつ頷く。無意識のうちに、アレクの定位置だったカウンターに目をやるも——もうそこに、瓶はあれども彼はいないのだ。
「出発前に、ちょっと寄っていこうか」
「……うん」
優しい手が、私の頭を撫でる。なんとなく既視感を覚えたのは、いったいどうしてなのだろう。
「……本当に、迷惑かけたし悲しい思いをさせちゃったね。ごめんね」
そして訪れた、アレクの妹である少女の墓だ。許可を取り、アレクのいた瓶を近くに埋めてもらって、私は少女に向かっての謝罪を口にする。
どうしてかひどく、安心できる場所だった。決して大きくはない墓のそば、もっと小さな十字架は、きっと仲の良かったペットのそれにも見えるだろう。本当ならもう少し、大きく作ってやりたかったが……スペースの都合もあるし、狭くてごめんねと苦笑した。
「どうか安らかに……っていうのは、私が言えたことじゃないんだろうけど……せめて、願わせてください。お兄ちゃんとも、仲良くね」
手を合わせ、彼らの安寧を願う。そうして荷物についた土を払いながら、私は静かに立ち上がった。
「……もういいのかい?」
「うん。あんまりいると名残惜しくなっちゃうし……兄さんもあんまり、湿っぽいの好きじゃないだろうしね。
それじゃあ行こうか、またね兄さん!」
『おう。また会いに来いよ、いつでも待ってるからな』
……え?
辺りを見回す。だがそこに、声の主らしき青年はいない。
サイラスに視線を送れば、切なげに笑っている辺り彼にも聞こえたのだろう。差し出された手を取り、歩き出した私たちの背後。はしゃぐ少女の笑い声と、それを宥める兄の声が。今度はほんのうっすらと、聞こえてすぐに消えていった。