＃３７ 「クラヤミ様」
青海観は、息子の青海輝に王位を継承し多忙になり
自分が少し楽になれた。
だが、元・国王の進捗状況はまだまだダメ…
少しずつ仕事に手をかけていこうとしていたのだった・・・。
まずは、輝の負担をなくさねばな・・・
息子の負担を減らすために、書類の引継ぎ作業を黙々としていると
廊下からメイド達の話し声が聞こえた。
作業をしながら耳を傾ける
ねぇ、あなたクラヤミ様って知ってる？
なんですかクラヤミ様って・・？？
クラヤミ様はね、この国の守り神よ・・
実際に聞いた話なんだけどね
この国の国民が大好きで・・・
国民の願いを確実に叶えてくれるの・・・
へぇ・・・国民愛が強いんですね！！
でもね、クラヤミ様の顔を
だれも見たことがないの・・・
え・・・・
クラヤミ様って人間じゃないんじゃ・・・
それもどうかも不明なの・・・
や、やめてくださいよぉ・・・
途中までいい守り神様って感じだったのに
急に怖くなるじゃないですか・・・
この城のモノなら、
あなたも知ってておいたほうがいいわよ
メイド達の話し声は聞こえなくなり仕事に戻ったようだった。
その話を聞いていた観は一言・・・呟いた。
そろそろ、片を付けないとな
その日の夜・・・
青海観は王族衣装ではない衣類に着替えて森へ向かった。
その姿を、王族関係者は誰も目撃していない……
月が隠れる前・・・自分が立っている場所が暗い
それを、自分の影が覆う
クラヤミ様・・・
どうか、どうか・・・お助けください！！
私の・・・母が病気で・・・
目を覚まさないんです・・・
病院に連れていきましたが、
莫大な料金が発生すると担当医に言われました・・・・
でも、私も母も・・・・
そんなお金持ってないです・・・・
どうか・・母をお救いください・・・・
クラヤミ様には、もう１つあった。
暗闇の中で誰かの影が見えるが・・・・
願いを聞いたあと、一言もしゃべらず・・・立ち去るのだと・・・。
願いを話した少女はクラヤミ様の姿が見えなくなったあと
自分も帰っていった。
どうか・・・・どうか・・・
両手を組んで願いを込めた。
城へ戻ると、青海観は最後の仕事をする……
書類審査が終わり……決定事項を息子の輝へと送信
そして、ミアンのもとへ行き結婚の日時を決めた。
その結婚は、処刑が終わったら果たされることになった・・・
翌日
皆さん、本日は人魚族を狩り
食べていた元王族達の処分が生中継で行われます。
犯罪者とは言え・・・
命が目の前で亡くなることに見ていられない方は
チャンネルを切り替えてください
あ・・・ダンテ・・・・
さよならの日だね・・・
ショーンは、その放送を観ず仕事に引き籠った。
仕事をする彼の眼には・・・涙の粒が流れていた・・・・
９人連続の処刑は、王が下すものではなく警備員が下した・・・
王は忙しく処刑を担当するどころではなかったからだ・・・・
第１皇子・成も・・別な仕事に追われていた。
処分は、あっさりと進み９人で40分かかった・・・・
その後・・・亡き９人の話をされるのはタブーとされ
誰も口にしなかった。
これでよかったのです
元王族の処分を現王族がすべきではない・・
必ず情は沸く・・
前の姫、シアン様が奴らと一緒に来なくて助かった・・・
性格は性悪でしたがあれでも、
我が国の元姫でしたからね・・・
処分を下した警備員は汗をタオルで拭きながら話していた。
生中継で見ていた人魚族の元へ時間を作り、
輝とラディアとラナは海辺へ向かった……
悪いな、ラナ・・ラディア急に呼び出して・・・
いいえー！大丈夫ですわ！
ボクたちも関わった案件だからね・・・
３人の話し声を聞き、チェルシーはミッチェルを引っ張って
２人は海から顔を出す。
輝様、ぼうや、それに・・・可愛らしい子・・・
今日は来てくださりありがとうございます！！
先の処分、私共は最初から最後まで見届きました。
そう・・・あの方達が私の家族を狩り、
引きちぎって食べた・・・
顔ははっきりと思い出せませんが・・・
仮面をつけてましたからね・・・
仮面をとるとなんとも可愛らしいただの人間・・・・・
できれば私達は、
人間達とは仲良くしたかったのです・・・・
噂は定かではないですが・・・
私の我が子とも言える仲間を
残酷に食した罪として・・・・
私はずっと・・・
９人目が命を終えるまでチェルシーや
この子達と泣きながら見ていました。
あぁ、、、これで・・・終わったんだと・・
その話を聞いて、ラディアは涙を静かに流した。
ラナはそんなラディアを慰めていた。
あなたたちは、まだまだ若い・・・・・
この国に・・２度と悲しいことが起こらないよう・・・
もう誰も涙を流さなくてすむような・・・・
そんな国にしてほしいです
ええ・・・もちろんですとも！！
その願いは王として、胸に刻みます
ありがとう・・・・
きっと、立派な王国になるわね・・・・
時に輝様は最近ご結婚なさられたとか・・
私に祝福をさせて下さい
ラディアとラナは２回目
輝は初回
祝いのダンスと歌劇を魅せてもらった。
あの時より、パフォーマンスも魅せ方もだいぶ変わったが・・・
あの時と同じ・・・楽しそうに笑顔で舞ってくれた。
最高のショーを見終わると３人は海辺を後にした・・・。
では、私達２人はこちらですのでー♪
またねー輝！！
２人も、今日はありがとう！！
人魚さん、前より激減してましたが・・・
またあのショーが見れて私嬉しかったですの！！
そうだね・・・この国をもっと・・・
より良い国にするには・・・
どうしたらいいんだろう・・
ワタクシたちも、何か・・・・
輝様達のお手伝いができればいいんですけど・・
近いうち、またルーや輝と会えるからその時に話をしてみよう！！
はい、ですわ！！
輝が城へ戻ると、机の上に書類が置いてあった。
それは貧困生活で苦しんでいるものへの書類で
そのもの達への医療費は、無料にして国が払うこと・・・
そして、生活が安全にできるよう一ヶ月に一度支援金を回すことになった・・・
その書類は、現在の国王のサインをもらえば通ることになっていた。
父さん・・・・・。
最後の仕事・・・・お疲れ様です。
スラスラッ～
輝は迷うことなくサインを手書きで書いた。
お母さん？私がわかる・・・？
最愛の娘を分からない訳がないよ・・・
よかった・・・・・・！
クラヤミ様、ありがとう
貧困生活で困っている国民に国王から医療費の負担と
月に１度の支援金をリストにある一家に送るとニュースでの発表があった・・。
それを機に、クラヤミ様は現れることがなかった・・
今でも噂は絶えないが
クラヤミ様は守り神として役目を果たされた・・・との声もあった。
そして・・・翌日・・・・
国の元王と現在女王の結婚が果たされ
国ではめでたいと祝福され
国民からのプレゼントを手渡しで受け取った。
つづく
