それでも論理的構築で築かれた現状の砂の城を否定するつもりなど無い。
見るからに不安定な土台の上に建てられてありながらも荘厳なその有り様は先達との絆であり、誇るべき誓約の証だからだ。
そこに何一つ不満があるわけでは無い筈だ…今の日常を成り立たせてくれるこの舞台に感謝さえしている。
それがグラスの中に生まれたひとときの間だけの泡沫の夢であったとしても。
「…しょうがないな、じゃありませんよ閣下。」
実桜は今回の事態が取り返しのつかない事態になってから報告が入ったことにあからさまな落胆と失望を隠せないでいた。
今まで大事に育ててきた「花壇」は見るに堪えない無残な有様を晒していた。
目の前の上司は「この場の収拾を図れるのは君しかいない。今回も期待に応えてくれるのを心待ちにしているよ」
という丸投げ方針を顔に張り付けて微笑んでいる。
はっきり言って反吐の出るいつもの日常だ。
「花壇」の構成要素や配置人員を根気よく育ててきた日々が今更ながら思い出されてきて苛立ちが再び戻ってくる。
自分が無力だったばかりに…みたいな自傷行為じみたふり返りは現時点では何も生まない。
むしろそれはこの事態を予測できなかった無能アピールをするのと同義なマイナス要因ですらある。
そして今自分がやるべきことは目の前の敵性人物の弱点を射抜くことではない。
そこまでの思考を組み立てた後、実桜は持てる理性を総動員してこれからのリカバリープランを説明し始める。
現状ではお得意のバタフライエフェクトで事象改変を起こす私の異能の出番は無い。
そもそも桶屋を儲からせたいのなら風頼みではなく真面目なマネジメントに取り組むべきであるし、餅の味の分からない餅屋に仕事を任せないことが大事なのである。
まるで新人教育一日目のような段取りで進めていくこのプレゼンが上手くいくことをまず願おう。
自らの感情を何とか制御することができた実桜はせめてこれからの日常に僅かながらの希望が生まれることを祈らずにはいられなかった。
