#3「episode」
私が本物よ?あんた達ウソ言わないで!どうせ、懸賞金目当てでしょ?
アンタこそ…ウソつきじゃない!私が本当の幼馴染よ!!
自分たちが本物だと言い張る争いが永遠と続く。
幹汰は頭を悩ませている。彼は、過去の記憶を思い出そうとすると激しい頭痛と過呼吸に襲われてしまうのだ。
そんな時だった、3人いるうちの自称幼馴染の1人が提案を出した。
私たちが争っても解決にはならないわ!どうせなら、幹汰に私たちの誰が本当の幼馴染か当ててもらいましょう!!
それはいい案だわ!そうしましょう。
過去の記憶を殆ど覚えていない俺にお前たちの誰が本物か見極めろだって?どこまで、おめでたいやつらなんだ。
でも…1つだけ覚えている…それは小学生だった時、幼馴染のあの子が俺に教えてくれた言葉。なんだったかな…はっきりとは覚えていないけど…
その時は、とても優しい女の子だなぁって思った。
俺も勝負に出よう…この勝負に乗って一番近い答えを出した人が本物ってことにしよう…
じゃあ、問題。俺が小4の頃、本物の幼馴染は花壇で心にグッとくる言葉を言いました。その言葉とは一体なんでしょう?制限時間は3分…
この出題に迷いなく答えを言えた人物こそが、本物の幼馴染。デタラメな嘘か真実か。
それは俺と本物にしか分からない過去の記憶…
この3人はなんて答えるのか…正直俺自身も分からない。
帰ってきた言葉は意外な答えだった……
・・・
3人とも無言?おい、うそだろ?このなかの3人は全員偽物?!
幼馴染を当てる、このゲームは振り出しに戻った。
本物がいれば味方につけることもこの先できたかもしれない…
そう思って仕掛けた勝負は水に流された。この3人は全員、偽物だということがはっきり分かったので、その場を動こうとしたその時だった。
コツコツ_________
俺たちのほうへ響く、一つの足音。それは、ゆっくりと静かに…
こちらに響き渡った…
この花は枯れてしまったけど、また次なる命へと新しく生まれてくるの。だから、そんなに悲しまないで…次にこの花が生まれ変わったらその時…この花をいまと同じくらい大事に育ててあげて。
カンちゃんは優しい子だから…どんなに小さい命でも大切にできるんだよね。
かつて聞いたことのある言葉が頭によぎる。そうだ、これだ!植物係だったとき、幼馴染に言われた言葉。
間違いない…いまも感動できるけどあの時は本当に俺の胸に響いた。
君が、俺の本当の幼馴染なんだな…。
俺が、上を向いた先にいた幼馴染は…さっき俺が疑った女の子だった。
過去の記憶が正しい…間違いない…この子だ!!
なーんだ、マジで本物現れちゃったみたいー。
ちぇ…つまんないの。遊び心で遊んでやってたのにさー。
本当の幼馴染が出現したところで、偽物を装った彼女らがため息をつき文句を言った。その言葉を聞いた幼馴染が…彼女らに近づいてとどめをさす。
懸賞金目当てでカンちゃんに近づいて、でも結局あなたたちはただのウソツキで偽物だから昔の記憶とか言われても思い出せないのは当たり前よねー。
次に、カンちゃんに近づいたら命はないと思ってね? 私、カンちゃんを傷つける人って許せないタイプなの…何するかわからないよ?覚悟…しておいてね?
きゃあああああああああ!
3人の偽物は、泣きながら走り去っていた。
ちょっと、やりすぎなんじゃ?
このくらい当然よ…私の大事なカンちゃんを傷つけた罰なんだから…
この子の言葉はあの時、俺が聞いた言葉とは違うけどここ数年間、この子と会っていない時に彼女が変わってしまったんだろうか?
昔は_______
恐怖を感じさせるような笑顔はしていなった。でも、あの頃に聞いた言葉と全く同じ言葉を言い当てた彼女は本物…だと思う。それに…
ねぇ、カンちゃん?持病のほうは大丈夫なの?
あの子たちは絶対に触れなかった、俺の持病のこと。
このことを彼女は知っている…俺の持病を知っている人は数少ない。だから、本物だと確信できる。でも昔と雰囲気が変わってしまったようだ…
あ、うん…大丈夫だよ?ありがとう…未梨愛。
この子の名前は…設楽未梨愛…
俺の本当の幼馴染。