solitario: chapter1.The Fall of the Princess「4.troublesome woman」

それから数時間後、昼から何も食べていない上に長時間休憩なしで車を走らせていたMはとにかく休憩したかった。

とりあえず、ハイウェイ近くの飲食店に入り、メニューを注文する。

正直隣にあるコンビニで軽食を買い、車の中で食べて寝るでも良かったが、Mの心理状況的にあの家主の事は一旦忘れて今日の出来事は綺麗さっぱり忘れたいという気持ちでいっぱいだった。
普段ならなんとも思わない長距離も、今回は三日間ぶっ通しで運転したかのようにくたくただ。

Mはカウンター前の椅子に座り、店主にビールとピザを頼む。
先に渡されたビールを口にしながらサッカー観戦で盛り上がってる客を退屈そうに眺める。

「隣いいかしら?あっ、マスター。彼女と同じもの頂戴」

サッカー観戦で盛り上がってる客を何が面白いんだか…と思いながら眺めていると、突然サングラスをかけた黒髪の長身女性がMの隣に座ってきた。
Mは最初「なんだこいつ」と思ったが、彼女の身に着けているものとサングラスから薄らと見える目元、そして話し声で分かった。

「お前、あそこのメイドだろ?」

「はい…?何のことですか?」

「隠しても無駄だ。数分前に聞こえたうるせぇ排気音、カウンターに置いているスマートキー。サイズとレザーカバーを見た感じ「アストンマーティン」のオプション品だ。しかもわざとらしく私の車に止めてるのはお前んとこで見たDBX707、そんなの普通の金持ちでも買えねぇ。そして、極めつけはその話し方。無理して訛りを無くそうとしているように聞こえるぜ」

「…ふーん。なかなかの観察力ね。家主様があなたの事を気に入るのがなんとなくわかるわ」

女性、いやレイラはくすっと笑い、ビールを口つける。

「それで、私に何の用だ?」

「んー?なんでもないわよ。つかの間の休憩ってだけ。けど、最後にあなたの顔を見たかったのよ。面白そうだし」

「…」

Mはレイラに質問をするが、彼女は意味の分からない事を言い、ビールジョッキに入っているビールを一気に喉に流し込む。

「…はぁ。まあ、それだけよ。それじゃ、「試験」合格するといいわね」

レイラは空になったビールジョッキをカウンターに音を立てないよう行儀良く置き、紙幣と謎のメモ書きを残して店を出た。

Mはカウンターに置かれたメモ書きをぺらっとめくり、何が書かれているかを確認すると「4:30 Call here if you are alive.」とどこかの電話番号が書かれていた。
はぁ…と深いため息をつき、ちらっと自身の愛車を見てみると、ガソリンタンクの下に小さな赤い光が点滅しているのが見え、馬鹿にしてるかのようにわざと見える位置に取り付けられている事など色々含め、さらに深いため息をつく。

「あーくそ!また負けやがった!」

「ははは!お前は毎回神に見放されてるなぁ!」

「うるせぇ…!…くっそ!やってらんねぇ!」

面倒な事になったな…と思いながらビールを飲んでいると、さっきまでサッカー観戦をしていた客の一人がイラつきながら店の外に出た。
どうやらどちらのチームが勝つか、賭けをしていたらしい。

馬鹿馬鹿しい賭けだな…と最初は思ったが、これは何かに使えると思ったMは店を出て男に話しかけた。

「おっさん、いくら負けたんだ?」

「んなのお前に…」

「教えてくれればそこに止まってる車と金やるんだけどなー」

Mは普段の話し方とは違う明るい口調で男に話しかけ、教えてくれなさそうにすると彼女は札束をちらつかせた。
だが男はそれでも頑なに話そうとしないのでさらに追加する。

「そんなに教えたくないんならいいけど…おっさんどうせ帰る金ないんだろ?貰っといたら?家着いたら車売っても好きにしていいしよ?」

「ほ…本当か?けどお前はどうすんだ…?」

「私はタクシーで帰るからいいよ。それじゃ!またどこかで!」

Mは男にそう言うと、10万円相当の札束と車のキーを渡して近くに止まっていたタクシーへと乗り、家主の屋敷付近を目指し移動した。

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柏木桜

悪そうな女の子(たまに違う)、車高低い車描いたり小説書いたりする人です。 どうもよろしくです。 たまにそれ以外もやるかもです。

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