No.11(2026年4月27日)
ついに5月の東京旅行の高速バスのチケットを取った。最初は大好きな新幹線で行くつもりだったが、場所を三軒茶屋にこだわったせいでホテル代が嵩(かさ)んでしまった。昔はそんなに高くなかったのに。可能な限り食べて呑んで楽しもうと考えた結果、予算を最大限活かすため今回は高速バスの旅にした。
高速バスに乗るのは、短大生として三軒茶屋に暮らしていたその当時以来なので、18年ぶりだろうか。そもそも今回の旅行の目的は一泊二日で思い出を振り返ること。高校を卒業して短大でひとり暮らしをしていたあの頃を振り返りたいのだ。
多少体力がしんどくても我慢する。高いビルが増えていく外を眺めていたらすぐ着くような気もする。昔だったら途中の休憩は佐野SAか羽生SAだったが、はたして今回はどうだろうか。どちらでもないということもある。移動時間はかかるが、あえて調べずにいる、移動も楽しみな自分がいる。
いくのはわたしひとり。東京に滞在できる自由時間は26時間。二日目にスカイツリーで友達に会う約束があるので、肝心の三軒茶屋にいられるのはその内 20時間ほど。2歳10ヶ月の息子がいる中で、これは夫にお願いできる中の、いまのわたしにできる最大限の冒険だ。
今回目的地を三軒茶屋にしたのは先述のとおり、完全に短大時代のせいだ。その当時のことは別のエッセイにしているが、当時はガラケーの方が主流で初代iPhone3GがSoftbank限定で販売されていた。わたしはその初代iPhoneを持っていて、ガラケーと2台持ちだった。友達に「やっぱりいいの?」と聞かれたりもした。渋谷の109近くではブラックベリーなんかの端末も並べられていただろうか。実質0円とか実質1円とかの大きな広告が目を引いた。いまみたいに便利ではなかったが楽しかった。
そもそも、ずっとひとり旅に出たいと思っていた。コロナの話題ばかりだった2022年も宿の安さに釣られて、高校時代に合宿で行った思い出の函館まで行こうとしていた。2泊3日でも新幹線とパッケージになったプランなら安く行ける算段だった。露天風呂がある宿にしようか、バーのある宿にしようか、その両方がある宿にしようか。朝ごはんなしのプランでも朝市があって楽しめそうだな……。なので呑気にあれこれ比較して、函館のホテルや地理に詳しい時期があった。
ひとりで行動するのが苦じゃないタイプだった。もちろん誰かと一緒に出かけるのは楽しい。おしゃべりな性格なので、体験や感想をその場で共有できるとひとりで気持ちを抱え込まなくていい安心感みたいなものもある。それでも独身時代からひとりで旅行したかった。普段はタイムパフォーマンスを重視して、時間を逆算してテキパキ子育てをしている。誰にも邪魔をされずに、気を遣わずに、ふわふわと思い付きで行動できる旅がしたかった。
ここで、どうして人は旅行するんだろう、という哲学的なことを考えてみる。一時的とはいえ安心できる日常を手放して、わざわざ不便で危険で疲れやすい外の世界へ行く。狩猟生活をしていた原始時代であれば「もっと水が豊かで獲物や木の実の多い理想郷があるはずだ!」なんて旅に出たかも知れないが、いまはiPhone17からAmazonでなんでも翌日配送してくれる。Googleのストリートビューも、行ったことない場所を見せてくれる。
それでも旅をしたくなるのは、スマホでなんでも調べられる時代になっても湧いてくる好奇心。なにか困ったことがあってもこのベースキャンプに戻れば大丈夫だから、見慣れない、リフレッシュになる刺激を求めてみようとする、心の余裕の裏返しのような気がする。
三軒茶屋でやりたいことはいろいろある。当時行っていた細道の汚いちゃんぽん屋さんに行きたいし、大阪焼肉の看板をくぐってひとりランチもしてみたい。神戸焼肉という看板もある。仙台で「仙台焼肉」という看板は見ないので、なにか流派の違いがあるのか気になる。タレが違うのだろうか。謎は深まる。
そんな旅行に向けて、スマホにチェックリストを作り、荷造りの前準備を進めている。今回はファスナー式の書類用事務用品の、書類用のメッシュケースを駆使しようと思って何個か準備した。つい大げさなキャリーバッグでガラガラ出かけたくなってしまうが、ジムに行くようなナイロンのスポーツバッグ1つにまとめようと思っている。
そこで下着や薬や化粧品を整理するのに、半透明のメッシュケースは便利そうな気がした。これで便利だったら、子どもを連れて旅行にいく時も活用できるかも知れないから……。いやいや今回は自分の為の旅行なのだから、あまり普段のことは考えないでいよう。
あとは天気さえ良ければいうことない。わたしは親公認の晴れ女でここぞという時には晴れる方だが、今回はどうだろうか。先のことなのでわからないが、いまから天気予報のチェックも楽しみになりそうだ。服装に悩むが、Tシャツと羽織り物があれば大丈夫という友達の話を信じてみようと思う。ゴールデンウイーク明けの東京は気温が上がりやすいそうだ。仙台に戻ったら気温差で風邪を引くかもしれない。旅行のあとのことまで考えてしまう。
旅行から戻ったら、またエッセイに体験談をまとめるつもりだ。良い話になるか、残念な話になるか。エッセイを書くことを念頭に、旅行中の出来事をメモに書き留めるつもりだ。ここに投稿できるのは翌月ぐらいになるかも知れないが、ぼんやり楽しみにしてもらえたら幸いだ。
