【最終話】おかえりの里 桜の木

 佐藤家は最近やっと、昔のように家族の会話が増えてきたので久しぶりに家族旅行に行こうということになった。

「俺、行きたいところがあるんだ。」

「私も行きたいところがあるのよ。」

「僕も行きたいところがある。」

「私も・・・。」

次の週のお休みの日、佐藤家のみんなは電車に乗っていた。

ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン

規則的な揺れに家族はついつい寝てしまった。

・ 

家族は駅員の声に起こされた。

「お客様、終点です。」

「あっ!すいません。」

慌てて降りた駅は薄暗く、人気の無い無人駅だった。

「おかえりの里・・・。戻ってきたんだ・・・。」

家族は駅を出ると商店街のような通りを歩いた。

見覚えのある町・・・。

「確かこの角を曲がったところに本屋さんがあったはず。」

「えっ?豆腐屋さんでしょ?」

「いや、駄菓子屋さんだよ」

「へっ?パン屋さんじゃないの?」

家族はその角を曲がった。

そこにはお店が5軒並んでいた。

「あっ、食堂もある。」

家族は真ん中の古びた食堂に入って行った。

その瞬間、家族の記憶は小学生だった自分たちに戻った。

「ケンちゃん、よっちゃん、しょうちゃん、リンちゃん遊ぼうよ~。」

「うん、何して遊ぶ?」

「大縄跳び!」

ケンちゃんとよっちゃんは縄の端を持って大きく回した。

「いいかい、みんなで息を合わせないと縄に引っかかるぞ!」

「せーの!」

そこからの記憶は消えていた。

辺りは白く朝靄が立ち込めていた。

家族は気が付いたらその木のある場所に向かって歩いていた。

街はずれのわかれ道にあったその桜の木は満開だった。

家族はあの頃と同じように手に持っていた昔遊びの道具を広げた。

「楽しかったなぁ。」

家族の記憶は小学生の頃の自分に再び引き戻された。

「たまにはみんなで一緒に遊ぶのもいいね。」

「そうだね。」

それから、家族は友だちに別れを告げて、自分の家?に帰った。

家には祖父母がいた。

「おかえり、みんな。ご飯食べて、お風呂に入りなさい。」

夕食の準備をする祖母、野球中継を見て晩酌をする祖父。

「お父さん、お母さんは変わってないなぁ。」

そう言って家族は笑っていた。

薪で沸かしたお風呂の柔らかい暖かさは家族を深い眠りに誘っていた。

久しぶりにゆったりとした時間を過ごしていた。

 目が覚めた家族は電車に乗っていた。

家族はふるさとに向かっていた。

実家では長男家族が待っていた。

「こんにちはおじいちゃんおばあちゃんに会って来たよ。」

「私も。」

「私も。」

「僕も。」

と佐藤家の人々は言った。

そうすると、長男家族は少し驚いた様だったが床の間に飾られている祖父母のニッコリとした顔を見て、全てを理解したようだった。

「そうですか・・・おじいちゃんおばあちゃんに・・・みなさんさん、長旅の疲れで電車で寝てしまって夢でも見たんですね?時間を忘れてゆっくりしていってください。」

長男家族はニッコリした。

みんなでニッコリした。


終わり                          第4話はこちら

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なないろびと

絵と小説をこよなく愛すおばちゃんです。 日々、コーヒーを飲みながら、創作の世界に旅に出ます。 旅の途中で、いろいろな発見があり、出会いがあり、挑戦があり。 雨上がりの空に架かる虹のように、一色に染まらない人でいることを心掛けています。

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