…ねぇねぇ式神ごっこをもう一回!
今となっては遠い記憶の中の情景。
幼い頃に親しい人たちと過ごした優しい日々の中の記憶。
今では当然のように受け入れた私の能力…霊的存在を使役し悪しき因果を断ち切る力。
その力を授かった時の記憶は鮮明に思い出せる。
小夜子はこの日の任務を終えて一息ついた後、長らくオフの予定を入れていなかった事に気づいて手帳の中の日程を確認していた。
様々な霊障や異能者間トラブルの対応予定がびっしり詰め込まれたその予定表。
それは現状の自分の存在意義を示すものだ。
だが最近は任務に忙殺される中で何が自分にとって大事なモノかを考える余裕もなかったなと感じていた。
手帳の一番最初のページに貼ってある幼き日の友人たちとの写真。
何故か今日はその思い出の中の記憶が懐かしく感じて、小夜子は思いにふけることにする。
そう、それはまだ自分の持つ幻想や偶像が自在に具現化できていた頃。
そして周りの世界が無限大の可能性を感じさせていてくれていた時代の話。
その時の自分は自らに備わった素質や才能の希少さに何の興味もなかった。
ただ自分のできることが楽しいことに繋がることを無邪気に喜んでいた。
何気ない普通の毎日の中、伝説や逸話の中の英雄の真似事をし大冒険の模倣に夢中になっていた。
…それはただの懐かしい思い出の1ページではなくいつまでも続くと思っていた日常の在り方だった。
そんな夢のような日々の中、夕暮れの帰り道に「ソレ」は現れた。
物語の中に出てくるような異形の姿をした「人影」。
禍々しくありながらどこか神々しさを感じさせるソレは微笑ましくこちらを見ているのがわかった。
小夜子は初めて本能的恐怖を抱き、自分の作った不出来な式神の形代を握り締めて心を落ち着かせようとしたが心のざわめきは収まってはくれない。
その様子を興味深く見ていた「人影」はにこりとして顔をほころばせた…気がした。
次の瞬間、小夜子の意識は膨大な情報量の色に塗りつぶされて意識は途切れた。
小夜子が神域に届くような能力を発現し背負うべき運命が確定した日の事であった。
