ある夏の熱帯夜、一人の泥棒が意識を朦朧とさせながら歩いてくる。
「あちぃ…涼めるところはどこかねえのか…」
泥棒は頭がぼうっとなりながらも入り込めそうな家をようやく見つける。ドアノブに手をかけるとカチャリと回った。ずいぶん不用心だと思いながらも泥棒は家の中へ入った。
「へっへっへ…お邪魔するぜぇ…」
中に入るとまるで天国かと思うほど涼しい。
「あぁ~~~っ!生き返る…。エアコンつけっぱなしで寝てんのか?まあこう夜も暑くちゃ仕方ねえか」
一息ついたところで泥棒は物色を開始した。
「何だよ、物が何もねえじゃねえか!この家にはミニマリストが住んでんのか!?」
泥棒はつい大声でツッコミを入れた。
「おっと、つい大声を出しちまった…。しかし、ここの家族ときたらぐっすり眠ってやがる。誰も起きてきやしねぇ…物が少なすぎるのもおかしい…何だこの家は…?」
泥棒は不審に思い、外に出ようとするも、
「待てよ、外はまるで地獄の窯の中だ。天国から地獄に逆戻りって手はねえな。少し横にならせてもらうか」
と言い、泥棒はフローリングの床の上にごろりと横になった。しばらくすると泥棒は大きないびきを立てて眠り始めた。
*
翌朝、泥棒は逮捕された。
「しかし、警部。犯人はなぜモデルルームに忍び込んだんでしょうね?」
「暑さで意識が朦朧としていたんだろうよ。このモデルルーム、夏は涼しく冷房いらずだそうな。涼しい屋内から蒸し暑い外には出たくなかったんだろう」
「なぜ鍵が開いていたんでしょうねえ?」
「あえて不用心にして泥棒を誘い込んでいるんだと。一種の虫捕り器だな」
あとがき
正岡子規の俳句「盗人もはいる此家のすゞしさよ」に着想を得て、この物語を作りました。皆さんはドアに鍵をしっかりかけるなどの防犯対策をしっかり行ってくださいね。
