親友の巴流が女の子を出産したという知らせを聞いていたが、私も同じく産後の身でなかなか予定が採れなかった。ようやく巴流と会えたのは、出産の知らせをもらってから半年後。娘を保育所で一時的に預かってもらい、『菓子処 もちづき』で巴流と会う。巴流の旦那さんである匠さんが働いている和菓子屋だ。
「久しぶりだね。あらためて出産おめでとう、巴流」
「ありがとう、風香」
巴流の腕には生後六か月になる桃果ちゃんが抱かれている。写真では見せてもらっていたが、実際に見ても丸々として可愛らしい女の子だ。
「わぁ可愛い」
「桃の実みたいにまん丸でしょ。桃の果実と書いて”桃果”。お顔を見て匠が決めたんだ」
「名前も可愛いね。ほっぺた触っても良い?」
「うん、どうぞ」
私は桃果ちゃんの頬を優しくなでる。ふっくらとした頬はすべすべして可愛い。目はくりくりとして可愛い。口も鼻も小さくて可愛い。感想が可愛いしかでてこない。でも実際に可愛いのだから仕方がない。
「本当に桃の実みたいにまん丸で可愛いね」
「桃の実は邪気を払う不老長寿の果実だって言い伝えがあるらしいよ」
「へぇー、ためになるなぁ。桃果ちゃん、良い名前をつけてもらって良かったねー」
私は桃果ちゃんの頬を両手で優しく包み込む。ますます穏やかな気持ちになってくる。
「おかげでうちでは夫婦喧嘩は起こってないんだ。桃果が悪い気持ちを追い払ってくれているんだね」
「そうかもね。桃果ちゃん、たくさん食べて大きくなってねー」
私は桃果ちゃんの頬をなでながら言った。桃果ちゃんはにこにこと嬉しそうに笑っている。
「はぁー可愛い。うちの子も可愛いけど、よその子も可愛いね」
「子供は天からの素敵な授かりものだよね」
巴流もにこにこ微笑んでいる。しかし何だか見た目が……。
「あの……、気に障ったらごめんね?巴流さ、前よりも少しふっくらしたね」
「あはは、産後太りかなぁ。これも天からの授かりものかな?」
「幸せ太りだよ。匠さんと桃果ちゃんと幸せにね」
あとがき
正岡子規の俳句「桃の如く肥えて可愛や目口鼻」に着想を得て、この物語を作りました。赤ちゃんは可愛いですね。健やかな成長を祈って優しい眼差しで愛でましょう。
