天界の住人による救済 第六話「明かさなければいけない時」

種植えなど、ある程度の作業は終わったため二人は休憩することにした。

イザベルは次に何をするか、どうしようか考え始める。

何かを始めようと思っても、二人には何もない。

道具を手に入れるとなると、さっきと同じように住人から貰うしかない。

何かを生み出すのがめんどくさいイザベルであったとしても、住人を何人も消して道具を貰う…いや、盗むのは気持ちがいいものではない。

イザベルは次に何が出来るかを知る為に、小屋を出て人間に姿が見えないように村と村の周辺を探索し始めた。

村の様子は天界で見たものと何も変わらない。だが、一つ違うとすれば日を追うごとに増えている「孤児」の存在だ。

村の路地に目をやると、やせ細ってそのうち餓死しそうな様子の子供を時折見かける。

イザベルは天使の身分を利用して彼らを救うことが出来るが、人間界で天使だとバレてはいけない。

助けたい気持ちは山々だが、見捨てるしかないのだ。

村の外に出ると、そこはとても広い墓場だった。

大規模とはいっても、墓の数は足りていないようで、一か所に死体が無造作に横たわっている場所があり、何体か部位が無くなっているものもある。

おそらくだが、これらは戦死者だろう。

それを見たイザベルは酷く心を痛める。

(フォルトゥーナ様だったら…どうしてるんだろう…)

イザベルはそう心の中で思った。

師匠であるフォルトゥーナなら、彼らに何かをしていただろう。

だが、彼女は何も思いつかなかった。

どうすれば彼らは安らかに天国へと旅立てるか…などの考えは思いつくがどう行動すればいいかはさっぱりだった。

何も出来ないイザベルは、遺体を見捨てることしか出来なかった。

それからあっという間に一週間が経ち、争いも激化している中、二人は何とか生きていけるだけの道具と食糧を手に入れることはできた。

だが、これではいけないと二人は思っていた。

それを特に思っていたのはイザベル本人だった。

だめだと分かっていても、住人を何人も消して道具を貰う…言い方を正せば盗むという行為を続けていくわけにはいかない。

争いが続いている中ではあるが、何か働き口が無いか?と思いイザベルは町を散策した。

(うーん…これは出来そうだけど天使だとバレてしまう可能性も…)

町の掲示板に貼り出されている求人を見るが、どれも人命救助や隊員募集など争いに関連するものばかりだ。

天使の立場として、隊員として戦場に参加するわけにはいかないし、人命救助は出来そうではあるが無意識に能力を使ってしまったら天使だとバレてしまう。

「そういえば、〇〇どこいったんだろうな…」

「教会近くの老夫婦か?行方不明になってから何日経ったか分からねぇけど、まだ見つかってねぇのか…」

今のところ出来そうなのは無いか…と思いながら後を去ろうとすると、掲示板の近くで話をしていた男二人の会話が耳に入った。

その会話を聞き、イザベルはピタッと足を止める。

(教会近くの老夫婦…)

イザベルは老夫婦の話に心当たりがあった。

なぜかというと、彼女は数日前、教会近くの老夫婦の家に入り、道具を貰っていったからだ。

もしかして…!と思い、イザベルは再び掲示板を見ると、生存者リストの中に「行方不明者」と書かれている項目を見つけた。

リストを見てみると、教会近くの老夫婦の他に、町外れの農家など複数人の名前が記されており、隣に書かれている行方不明になったであろう日付はイザベルがこの町に来てからの日付が記されていた。

何がまずいかは分からないが、早く戻らなきゃならないと思ったイザベルは、その場から逃げ出すようにカテリーネのいる小屋へと走り出した。

「離せよ…!」

「うるさい…!人の家に勝手に入りやがって!〇〇をどこにやった!!」

「知らねぇよ…!」

イザベルの悪い予感は的中し、カテリーネは男に掴まれていた。

「おいイザベルどういうことなんだよこれ!お前何か知ってるんじゃねぇか!?」

カテリーネは罵声のようにイザベルに言った。

彼女はどうすればいいのだろうかと思ったが、ここで黙っていたら埒が明かないと思い今までの事をすべて話す事にした。

「ごめん…全て私が悪いの…」

イザベルはカテリーネにそういうと今まで隠していた天使の翼を見せ、謝罪した。

「お前…その羽…なんだよ…。まさかお前…天使なのか…?」

「うん…そうなの…今まで隠しててごめんなさい…」

イザベルは俯きながらそう言った。

彼の顔を見ながら離さなければいけないのは分かっていたが、神や天使を酷く憎んでいる彼が今どういう表情をしているのかを知る事がとにかく怖かった。

「そうかよ…全部お前が悪いんじゃねぇか!家族が死んだのも!住む場所が無くなったのも!俺は逃げながら神に祈ったよ!それがどうだ!?何も叶わなかった…!…だけど…お前と出会えてこれからやり直せる…そう思ったのに…!!!全部お前ら神のせいで俺の人生は滅茶苦茶だ!」

カテリーネはイザベルに大声で怒鳴るように言うと、彼を掴んでいる男を振りほどき、イザベルに殴りかかろうとした!

イザベルは「これは罰なんだ…」と自分に言い聞かせ、ぐっと堪える。

「な…なんだよお前…離せ…!」

「はぁ…心配だから様子を見に来れば…何とか間に合って良かった…」

カテリーネに殴られるのを堪えていたイザベルだったが、殴られたような感触などは一切なく、そして聞き覚えのある声が聞こえたため不思議に感じ目を開く。

そこにはカテリーネの拳を掴んでいるフォルトゥーナの後姿があった。

「…フォルトゥーナ様!?何でここに…!?」

「…いいから帰りますよ」

イザベルはフォルトゥーナに質問しようとしたが、彼女はイザベルの話を無視し転送魔法を使った。

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柏木桜

悪そうな女の子(たまに違う)、車高低い車描いたり小説書いたりする人です。 どうもよろしくです。 たまにそれ以外もやるかもです。

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